デヴィット・スタックラー「経済政策で人は死ぬか?」

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

  • 作者: デヴィッドスタックラー,サンジェイバス,橘明美,臼井美子
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2014/10/15
  • メディア: 単行本

世界各国の医療統計を公衆衛生学者が比較分析し、不況下において適切な経済政策を行うことが、国民の生死に左右するという厳然たる事実を突きつけた本が、「経済政策で人は死ぬか」です。

この本では、世界恐慌・ソ連崩壊後の不況・アジア通貨危機・サブプライム危機などの雇用統計を引用して、不況下で緊縮財政政策をおこない、さらに国の支出の中での医療費や社会保障費を削減した国では、死者数や自殺者数が増加したことを説明しています。

逆に、不況下でも社会保障費・医療費を削減しなかったり、景気対策を行った国では死者数や自殺者数に変化が無く、適切な経済政策を行うことが国民の命を救うという厳然たる事実を突きつけています。

社会保障費の削減や、緊縮財政がいかに人の生死に直結するか理解することができました。

最近読んだ経済学の本の中でもすばらしい本のひとつです。

反緊縮のバラマークキャンペーン、与党を除外するのは不公平ではないか

rosemark.jp

薔薇マークキャンペーンという、「反緊縮の経済政策」を唱える政治家に対して薔薇マークを認定し、応援していくというキャンペーンのようです。上記のホームページではこのようなことが書かれています。

日本では今、職を失う不安、パワハラ、「サービス残業」、介護や育児の負担、賃下げなどで、5割を超える人が「生活が苦しい」と答えています。私たちは、こうした中でおこなわれる2019年4月の統一地方選挙と7月の参議院選挙で、99%の人々の生活を底上げする「反緊縮の経済政策」を掲げるよう、立候補予定者に呼びかけます。そして、これに合致した経済政策を掲げた立候補予定者を、政党を問わず「薔薇マーク」に認定し、生活の改善、生活不安の解消を切望する多くの人々の投票の参考にしてもらおうと思います。

ですがTwitterの公式アカウントでこのようなやりとりが公開されています。

私自身も緊縮財政ではなく、金融緩和・積極財政を行うべきだと考えているため、このキャンペーンそのものについては賛同します。しかし、「反緊縮の経済政策」は上記のツイートが示している通り与野党や左右は関係ない問題のはずです。ですので、理由が乏しいからといって政治家を差別するのは、この運動の公平性に問題をきたす可能性があるということです。

さらに、薔薇マークが認定された議員が仮に緊縮を支持するような発言をした場合、薔薇マークを取り上げることで圧力をかけることもできるはずです。なにはともあれ、認定は公平に取り扱ったほうが、政治運動として機能すると思います。

いまの日本には日本列島を改造する余裕はあるのか

北海道新幹線の最高速度を140kmから160kmに引き上げることで、東京から函館までの時間を4時間以内に抑えることで、飛行機に乗る乗客を新幹線に呼び戻す計画のようです。

私見を申し上げると最高速度を引き上げたところで函館から東京までで45,000円以上かかる時点で、この計画は破綻していると考えます。さらに、函館から札幌までの特急列車に乗ると合計で60,000円以上かかる計算になります。東京から札幌までを航空機で移動した場合、20,000円を切る航空券もあり、2時間で移動することができるため、利用者が新幹線を利用するメリットは低いでしょう。

まだ札幌ー函館間のが開業しておりませんが、乗客数が増える見込みが立っておりません。

response.jp

さらにJR北海道が普通路線で赤字を拡大する中、北海道新幹線だけで100億円を突破する見込みになっています。なぜ企業が赤字を拡大するような事業を継続するのかというと、整備新幹線という国策が今も継続しているからです。

積極財政のための公共事業という側面があることは理解できますが、新幹線が負債になってしまった場合、経済に暗い影を落とすことになるでしょう。

待機児童問題を言葉遊びで国民を挑発する杉田水脈氏。

自民党の議員のほとんどに言えることですが、日本の家族観が昭和時代で止まっているように見えます。現在は夫がサラリーマンで妻が専業主婦の核家族というのは少数になっていて、子育て世代である若年層世代のほどんどが共働きであることを知らないようです。

そのような世間知らずの杉田水脈氏へツイッターから様々なツッコミが入っています。

杉田氏は以前に話題になった「保育園落ちた日本死ね」から始まる待機児童問題についても産経新聞の連載でこのように発言しています。

「『あなたよりも必要度の高い人がいた』というだけのこと。言い換えれば『あなたは必要度が低いので自分で何とかしなさい』ということなのです」

そもそも安倍内閣では。野田聖子女性活躍推進大臣を任命してM字カーブの改善に力を入れていると言われています。M字カーブとは女性の年齢別の労働人口を描いたグラフのことです。25~40歳の子育て世代で労働人口が落ち込むことからそう言われています。

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第1-特-10図 女性の年齢階級別労働力率の世代による特徴 | 内閣府男女共同参画局

杉田水脈氏のこの発言は自らが崇拝する安倍首相の足を引っ張るだけでしょう。日本の議会から杉田氏のような発言をする議員が無くなることを望みます。

韓国の経済政策は何故失敗したのか?

 韓国経済が不調だ。文在寅(ムン・ジェイン)政権の「失策」がやり玉にあがり、現状は日本の民主党政権の失敗を彷彿(ほうふつ)とさせる。「来年も最低賃金引き上げで中小企業はさらに厳しくなる」。韓国の中小企業経営者の悲鳴を韓国経済新聞は伝えている。文政権による最低賃金の引き上げ政策で人件費が膨らみ、経営体力の弱い中小企業が人員削減を迫られているのだ。今月発表された韓国の今年7~9月期の実質国内総生産(GDP)改定値は前期比の年率換算で2・27%増と速報値(2・31%増)から下方修正された。前期(2・40%増)に比べると経済成長の鈍化はより明白だ。

韓国の経済政策の失敗は明白ですが、その失敗が経済の教科書に乗るほど典型的な失敗でしたのでまとめてみたいと思います。

まずムンジェイン大統領になってから行った政策が最低賃金の引き上げ政策です。最低賃金の引き上げは「一部」の労働者にとって賃金の上昇になりますが、経営者側からみて負担増になります。

そのため上記の引用からわかりますが、体力の弱い中小企業にとって労働者の雇うインセンティブが減少し、それが韓国経済の悪化につながっていると考えられます。

ムンジェイン大統領は非正規雇用と正規雇用の格差を解消することを目的に行ったと思いますが、この政策を発表した際にマクロ経済に明るいブレーンがいなかったのでは無いかと思います。

 2月13日に1月の失業者数が過去19年で最悪だとの統計が発表されると、洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相は予定になかった経済閣僚会議を開いた。政府機関による採用をさらに2000人増やすというのが骨子だった。数日後、昨年10-12月の所得分配が過去最悪だったとする統計が出ると、洪副首相は再び緊急関係閣僚会議を開き、政府予算を低所得層に振り向けると述べた。

政府機関による採用をさらに2000人増やすという財政政策を行うことが検討されていますが、あまり効果があるとは思えません。本当に完全雇用を目指すためには、積極的な金融政策が必要ですが、ムンジェイン政権がそのような経済政策を行う可能性は皆無でしょう。